エポケーの歌(1)
生田 稔
数年前一切合財の判断を
ストップすることを習った
つまりエポケーさ
ブラック・ホールと
いうものは無いと
ネットはおしえてくれた
ではブラック・ホールと
エポケーを組み合わせて
一切合財を
ブラック・ホールに
投げ込んででみることにした
これはうまい具合で
どんどん投げ込んでゆくと
手持ちは何もなくなった
つまり、元の出発点に
立った
これだ、これからだ
と思うとジーンとした
新しい着眼だと
胸が躍った
もう投げ込むものは
残っていない
自分の、どちらかと言うと
ある人々の言う
美しい自分だけが在る
まず目を上に向け
そして、おもむろに
下に下げ
始めよう始めようと
もがくように
あがくように
判断を開始する
新鮮なものが
こみ上げてくる
一切が美しい
自分のセルフの中に
存在を始める
ほのかな匂いも
こみ上げてくる
目を隣に、向かいに
彼方に転じてゆく
と皆が変化しだした
たとえようも無い光景が
広がる
光が満ち満ちて
アモルファスな
一切がゆっくりと
形をとる
無数の確かに
新しい生命が
誕生しだす
新しい創造だと
誰言うとなく
皆が叫びだす
とうとうこうなった
こうなることが約束されていた
旧いものはなく
個性ある何物かが
目醒めはじめている。