市民と詩人
N.K.
だいぶ昔に読んだのだけれど
北杜夫はトニオとともに
市民と詩人の問題をそのままに受け止めてしまった
マンは対立命題のつもりだったらしいけど
そんな北杜夫が好きだったと言っていいかな
もちろんドクトル・マンボウも好きだったけれど
詩人にはみな額に印がついている
もちろんトニオにも
真っ直ぐな北杜夫にも
おそらくカインのような印が
印のあることは呪いだ
それは弟を殺し さすらうものとなった証
印のあることは祝福だ
撃ち殺そうとするものから守られる
自分に印があるかはわからない
誰に印があるかだって本当のところは
自分には印の意味さえ量りかねる
印は人がつけるものとは断然違うのだ
でももし言っていいならこう言っていいかな
今でも北杜夫が好きだ
もちろんドクトル・マンボウも
夜、机の前で世界に対峙していた北杜夫も