市民と詩人
N.K.

だいぶ昔に読んだのだけれど
北杜夫はトニオとともに
市民と詩人の問題をそのままに受け止めてしまった
マンは対立命題のつもりだったらしいけど

そんな北杜夫が好きだったと言っていいかな
もちろんドクトル・マンボウも好きだったけれど

詩人にはみな額に印がついている
もちろんトニオにも
真っ直ぐな北杜夫にも
おそらくカインのような印が

印のあることは呪いだ
それは弟を殺し さすらうものとなった証
印のあることは祝福だ
撃ち殺そうとするものから守られる

自分に印があるかはわからない
誰に印があるかだって本当のところは
自分には印の意味さえ量りかねる
印は人がつけるものとは断然違うのだ

でももし言っていいならこう言っていいかな
今でも北杜夫が好きだ
もちろんドクトル・マンボウも
夜、机の前で世界に対峙していた北杜夫も 


自由詩 市民と詩人 Copyright N.K. 2008-07-28 22:49:25
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