幼虫
吉岡孝次

切り詰められた言葉しか持たない子供たちは
短い針で生爪をつつき合い
TVで覚えた微笑みをかぶりながら
不信感を募らせている
青空と死を望み
重たい関節をひきずって
ゆがみ合っている
物心ついた時から自分と離れ
他人みたいな身体の中で不確かな共生を営み
黙り込み
死ぬ
友達は悪意の代名詞で
恋人は性欲の丸のままの蕩児
ナイトショーを両親と視終わった後は
勉強部屋で泣き出しているのだ
教室の小さな机は足をかみあわせるにはちょうどいい大きさで
おおいかぶさって貧乏ゆすりをして
先生はオールドミス
校庭は雨が降ると糞尿のようになる
階段の手すりを拭く
晴れた日はポプラが白くてきれいなんだ
しょっちゅう黒板の上の時計を盗み見して
また生きる気力をそぎおとし
45人の無関係な子供たち
そのなかの一人がむやみにおかしいやつで
ひとりごとが多くて
クラス発表のときいきなりマンガの話を繰り広げ
便所掃除はいやに熱心
女子の体操服が欲しくてたまらないそうだ
例えば!雪が降ると
「協調性」を発揮してみんな雪合戦を始めるけど
結局は自分が楽しければいいといった感じでバカ蛍みたいさ
そんな子供たちがそのまま成人式を迎え
小学校の頃とそっくりなのを見るにつけ
そしてまたその姿が自分に似ているだけに一層
虫酸が走るのを今さら抑えきれないのである



自由詩 幼虫 Copyright 吉岡孝次 2008-07-28 22:23:46
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