真夏のスノー
モリマサ公

気が狂っている
音声で表示されていく地図たち
がひろがってみんなしねばいい
信号待ちから動き始めた列を追っかけてくろくながくブレーキの
ながくのびながらまっすぐ中央分離帯にむかってく痕をのみこんで
わたしたちをのせたままなだらかにみんなしねばいいい
空気がすこし残ったゆがんだアドバルーンを片隅にのせたまま駐車場はかたむいている
死にたいと恋人が
目を見開いた状態でねむってる人間の顔みたいな
気持ち悪さでつづいてく
誰の住んでるどの街にもあるファミレスのメニューみたく
近くて遠いのにどこまでもつるっとつながってて
覗いてる全員のその感覚がいま全部ここに
いまここになにもかも
超全部
つながってる
どうでもいいおしっこをがまんしてるなんていえなくて
高速を走り続ける
死にたいという根本的なまなざしと感動
いのりというのは鳥 で
つたわり方によって
個体から液体そして気体へと変化したりはしない
存在する
ということについて
今はもう考えたりしなくていいんだよ
みんなしねばいい
きぐるみの通り魔が猛然とダッシュするストリート
全世界に共通するテロリスト
かれらを産み落とした親たち
が自分の子供の名前を検索する
わたし達が
実際なぜあのときあの子供を生んだのか
という気持ちにもいちどもどって考えてます
背中の液晶画面一杯に
一体何故?
とテロップがくっついて
ざわっとなる
白目の父親が「じゃあ親の気持ちになって考えてみろよ」っていう
あいつらはみんな変態
トラックが通過するたびに揺れてるたくさんのアパートとマンション
四つ木のジャンクションでわたしたちは交差していく
時速と停止してるものの関係を俯瞰する
中川の対岸沿いの建物のかべたち
それぞれのいろあせかた
そこで働く人と暮らす人たちの
茶碗やろうそくを並べて
うぜーシンプルな家族?
もう一度そろう食卓?
それぞれの国の油や香辛料をかいで
橋たちがゆっくりとのびていく
時間というあふれるような流れ
その速度と浮力が
リアルなスピードにのってどんどん近づいてくる
首都高の看板のみどりいろ
しろくぬかれた小菅
の文字がはりついたその出口をでていくもやもやした笑顔たち
東京拘置所に吸い込まれていくかすみがかった輪郭
あれはわたしたちの家族?
それってもしかしてハッピーエンドですか?
なにここ?これは‥?未来?
みんなどうかしてる?
死ね
死ね
死ねばいい
衝撃!の文字とともに
宇宙人がつぎつぎと人質をとりはじめる
ブラウン管の中をうかんでいく体がどんどんUFOにすいこまれて
それぞれの言語のCMにはさまれながら

なんだろうこの失われていく感覚
なんだろう

明日もおにいちゃんが5分間隔で手を洗い
お父さんがお母さんの目をボールペンで刺そうとしてる
家は三軒先まで燃えてしまった
愛ってのは本当にいい
いろんな形があって
顕微鏡で細胞みるのと
シャトルの窓から砂漠みるのとが似てるみたく
質量をこえて
分解されながら違う形になってつづいてく
ビビットで醒めないピースフルなメッセージが
はいはいあーそーですか
あんたが全体にえらいよ全部
えー正しい音読ですかそれが
え?
度重なる家庭の事情がいっせいに草原の草のようにそよぎだし
吹いている風すら自分の責任?みたく思い込むこどもたちの群れが
光の中を走ってる
そっかーこのことだったんだー
うでをのばしてばらばらに
がけのふちから
飛びたっていく
きもちわるい
きもちわるい
孤独な太陽の下でどんな細い枝にも付着する
逆光ではいいろのスノー

なんだろうこのつまさきの浮遊感
なんだろう


きもちわるー
つーか

なんだろうこの失われていく感覚
なんだろう





 


自由詩 真夏のスノー Copyright モリマサ公 2008-07-28 20:21:50
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