種子
モリマサ公

細い糸のように感情がのびていく
青い空の中でゆれてる
スローで閉じていくひかり
どこでもない
誰も知らない
息継ぎのまに
電車のような時間が
みんなを乗せて
「家族」という文字が色あせ
つめたい汗が降ってくる
ひび割れたコンクリートのすきまから
腕がのびて
あるいは植物だった
血管に差し込む
まっさらな注射針が折れて
あたしたちの
朝のニュースとテロップ
ぶれている画面
マゼンダシアンイエローブラック
「犯人はいったいそのとき何を考えていたのでしょう」
はっぱたちがいっせいに透き通り
ベランダの洗濯物がひるがえる
動物の赤ちゃんをだっこして
顔を埋める
どこでもない
誰も知らない
息継ぎのまに
電車のような時間が
みんなを乗せて
「家族」という文字が色あせ
虹いろの輪郭がループする
「またみんなで一緒に暮らしたいね」って
妹がぼんやり言って
スイカを切り分け
鳥が鳴き
視界がぼやけ
まじった種子を吐き出す






 














自由詩 種子 Copyright モリマサ公 2008-07-28 01:45:18
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