顔を洗ったのだが
そらの とこ

どうも顔がムズムズ疼くので
慌てて顔を洗って鏡を見ると
目と鼻と口と眉毛とえくぼが無い
耳も少し消えかけている

顔をごっそり洗い落としてしまったらしい
でも見える
鏡にに映る自分が
さっき使った洗顔フォームが
時計を見たら
今日が明日で今日が昨日になっていた

神経は死んでいないのか
のっぺらぼうの私の 中 では
目も鼻も口も機能しているのか
試しに
食べかけのアイスクリームを口があったであろう場所に運び
口を開ける仕草をすると
スプーンがくわぁりと肌をすり抜けていく気がした
そんなアイスクリームはまるで乳液のように
肌にしみ込んで消えた

淋しくはない
苦しくもない
ちょっと嬉しい
ほらアニメみたいに
新しい顔がもらえるんじゃないかって
失くす前の顔
一重だし
細目だし
鼻は丸くて
ゲジゲジ眉毛
いいところなんてない

新しい顔、えびちゃんっぽいのでお願いします。

気が付いたら朝だった
何気なく洗面所に向かって見えた自分の顔
淋とか泣とか涙とか悲とか
そんなことばかりが書いてあって
涙のあとがくっきり残っていた

そうだ
こんな夢を見た
顔が無いことを笑われる夢だ
あのコは怖いといって泣いていた

ふわあ ふはあ ぶわあ
止まらない 気持ちが止まらない
目が無いのに涙は溢れ
口が無いのにあ゛あーと漏れ
鼻が無いのに鼻水が垂れる

悲しくなった
悔しくなった
顔を失くしたことを後悔した

私は洗った
顔を何回も
何回も
それでも淋とか泣とか涙とか悲とか
涙のあとも消えず

ただうな垂れて
鏡に映る顔は
いつもの自分だった


自由詩 顔を洗ったのだが Copyright そらの とこ 2008-07-28 00:41:59
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