いいわけ
まりょ
その夜
確率論だとか
誰それがとても悲しむとか
そういうくだらない
なんでもない
ことでしか
君を止められなかった
僕だったらそのまま
飛び降りていたと思うから
君は本当に情が深いね
悲しみ疲れて
泣きもせずにすとんと眠った
けど僕の見ていないところで
マジックみたいに
刃物でも飲んでいやしないかと
僕は全然眠れなかったよ
雨の交差点で
ふらりと向こう側に行きそうな君
のそばに居るのが好きだった
のは完全に自己満足で
薄汚い
僕の内容物を全て
ぶちまけたら君はどんな顔をして
受け入れようとするんだろうね
そうしてまた
世界の終わりのような朝焼け
息絶えたみたいな背中
冷却材をそっとまぶたに乗せると
瞬間、くしゃっと顔をゆがめて
静かに涙を流し始めた
やさしすぎて
君に世界は圧倒的だ
だけどそれは
君の終わりのための言い訳には
なりえないよ
どんぶり一杯分くらいの
ティッシュを顔に押し当てて
洗面所に向かおうとする君
の袖を短くつまむ
濃縮洗剤やカミソリのそばでも
ふらふらしないための
僕は君の最後の言い訳になりたい