不眠夜
びわ

一定の間隔で
聞こえてくるこれは 悲鳴ではなく
うち上げ花火の音らしい

夜は
みえないものへの思いが強くなっていく

布団の体温がまたわたしを憎んでいる
だえきの甘いにおいが地続きにただよう
夏の浸透圧

河の気配が家々の屋根を舐めて流れ
錯覚の対岸が 静かにゆれている
あみ戸の向こう
わたしは全てのもののはざまで
まんじりともせず
景色だけが遠のきつづける
見えはしない 
かすかな空気の遮断が
わたしにそれを知らせる

夜が停滞して
部屋は濃度をましていく
火の粉が落ちていく 静かな泥の中へ
 
あの花火は何色だろう


自由詩 不眠夜 Copyright びわ 2008-07-24 23:46:04
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