「期待」する事は 日焼けの後の痛みに似てるわ


§黄緑色の花嫁


真っ白で真っ新のウェディングドレスに包まれて

あの丘の上で笑っていたのは

黄緑色の・・・

※ ※

エーゲ海の見えるこの街は
昔は大きな港町だったのですよ

でもいつしか錆びれていって
今じゃこの様

住んでるのは私とジャンヌくらいですよ

？あぁ、ジャンヌをご存知ないのですね

あなたは旅人ですから
それじゃ少しだけ
お話しましょうか・・・

※ ※

ジャンヌはこの街で育ったのではありません
他国から亡命してきた、所謂異端者です

でもやっぱり異端者ですからね
忌み嫌われておりましたよ

理由の一つに
「髪の色が気味悪い」
という事がありました

ジャンヌは生まれつき髪色が淡い黄緑で・・・
そこで付いたあだ名が「黄緑色のジャンヌ」ですよ


でもある時
ジャンヌに結婚を申し込んだものがおりました

ジル

彼も異端者で
ジャンヌのたった一人の友人でした

すぐ挙式を挙げて
ジャンヌとジルと私だけのですがね
2人は晴れて夫婦になりました

でも
しばらくしてジルが徴兵されてしまったのです

帰らない夫を
ジャンヌは待ち続けていましたが結局
ジルは帰ってきませんでした

そしたらジャンヌは私にこう言いました
「『期待』する事は 日焼けの後の痛みに似てるわ」
私には意味がよく解りませんがね
それからふらりと海へ出かけて
それっきりです

でもね
私 見たんですよ
丘の上にジャンヌがいるのです

あの頃と変わらない笑顔を浮かべて
真っ白なウェディングドレスを着た・・・


―黄緑色の花嫁