「迷い森」
ベンジャミン
透明水晶の信号柱から
七つ先の林道をかけあがると
ずいぶんと見晴らしの良い高台に
ブナの木が一本立っている
木の実を転がしながら
その細い林道をしばらく行くと
もう帰ってはこれないのに
さっきも一人すれ違った
僕は懸命に止めようとしたけれど
その人もまるで透明で
僕の身体をすり抜ける
いや
もしかしたら
僕が彼をすり抜けていたのかもしれない
僕は落ちた木の実を拾って
それを道標にしてきたのに
透明水晶の信号柱は
ただ青く点滅しているだけで
そこにはもう道なんてなかった
自由詩
「迷い森」
Copyright
ベンジャミン
2008-07-22 22:05:55
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