虹製造機
m-rod

ひとりで食べる朝食が
どこかさびしく感じた
それはちょっと前に見た夢の中に
君が 
居たからなのかもしれない

溶けかけたコンクリートの階段を
少しずつ上るその姿は
最終的に
そう 終わろうとするために
装置の蛇口を
力いっぱいひねったんだ

大きな噴水の傍で
小さな君は笑う
吹き上げられた水しぶきに
陽炎さえ溶かしながら
隠れて涼んでいる
俺を指差しながら
「近づいて」
君は 水色の声で言った


昼前になって
ようやく 我に返った
あれは昔のことなんだ
君が
居てくれたときのことなんだ

生まれたばかりの赤いランプは
やがて青い色に変わっていく
熱を失いながら
強さを蓄えながら
成れの果てなのか
慣れの果てなのかも知らないまま

大きな木の下で
動揺、を口ずさんで
興味ない 関係ない
邪魔虫の存在を嫌う
隠れて腐って行く
実を揺らしながら
「一人にして」
俺は 色気ない台詞を吐く
それでも
それだって葉っぱの上で

出会うのが怖いから
そんな理由で
部屋においている虫取り網
たいしたことないよって
君は笑っていたっけ

網はすっかり
腐ってしまったけど
水色のカーテンはまだ
変わらずに部屋を包んでいるよ
最終も基本もなく
それが俺の生理だから

人をヒントに
フォトをフォントに
適当にはねる言葉
捕まえて書いている
つけっぱなしのテレビ
気付かずに放っておく
銀色の列車がほら
やっぱり、君の家に向かって走ってく


自由詩 虹製造機 Copyright m-rod 2008-07-22 18:21:10
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