迷い森
小川 葉
迷うほど
その森はあらわれて
洗われる
下着の下で蠢く
植物の言葉と
虫の目覚め
それらはやさしく
息を吹きかける
僕の頬に
ときにはその存在を
確かめるように
さらにはげしく
ときに甘く
撫でつける匂いを
たなびかせて
眠りにつく
やがて夢のように
森のように
あったはずのものが
そこにない
うちへ帰ろう
母さんを待とう
たとえシチューの
いい匂いが
しないとしても
迷うほどに
豊かな森が
そこにあるとしても
自由詩
迷い森
Copyright
小川 葉
2008-07-22 01:03:47