花火
1486 106

屋台の行列と祭囃子
利根川の水面が映し出す宵闇

藍色の浴衣と広島風お好み焼き
袋の中で呼吸する金魚


やがて遠くの方から花火が上がると
人々は一斉に夜空を見上げる
不意に懐かしく感じるのは
どこか似ているからかもしれない



子連れの夫婦 ふと目をやると
父親は僕とほぼ同い年

いつかは僕も同じように
神社の境内で記念写真


花火は一瞬で消え去っても
人々の心にその姿を焼き尽ける
不意に切なく感じるのは
どこか似ているからかもしれない



遠退く喧騒と車の渋滞
人々は足早に家路を急ぐ

静まり返った会場に残るのは
夏の余韻と少年の淡い恋


花火の音は高らかに鳴り響き
砕けながらも光を撒き散らす
それははかなくも強く生きる
人の姿とどこか似ている


自由詩 花火 Copyright 1486 106 2008-07-22 00:50:43
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