キティのデザインハンカチ
りゅうのあくび
残像にある
夏の陽差しが萌える
ニッコウキスゲの
ように咲いている笑顔に
揺らめく胸のときめきは
信濃銀河鉄道の
レンガ色に敷かれたアーチ橋へと
遥かに架かる
真っ赤に錆びついた
レールの上に沿って
ずっと伸びてゆく
別荘を掃除する手伝いに
車で来ていた
休日の軽井沢で
ご当地でしか流通していない
キティのハンカチを
お土産にして
ほしいと頼まれて
軽井沢駅の南側にある
ショッピングモールを
彷徨ったあと
ようやく見つけ出して
手に入れることが出来たのだけど
綺麗に
たたまれているはずの
ハンカチのキティが
何だか頬を
引っ張るような声で
呼んだような気がして
携帯電話が鳴る
出逢いも突然なことだった
きっと瞬くようにして
消えてゆく恋があるのだろう
彼女は一回逢うごとの
お小遣いとして
随分の金額を求めていた
詩集を出すのに
お金が要るから払えないと
伝えていたはずなのに
労働による駄賃ではなく
その白い身体を売ることによって
得られる贅沢というものが
あるとしたら一体
彼女はすれ違うたびの男へ
どんな作り笑いを
振りまかなければ
ならないのだろうか
微笑の
夢を見ている
手渡されることのない
キティのハンカチは
まるで恋の最終幕が閉じられる
カーテンベールみたいにして
哀しく小さな空のレールの下に
静かにひかれていた
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Breath of Fire Dragon