『シャー芯』
東雲 李葉
お気に入りだと言う匂いのついた消しゴムや、お洒落なロゴの入った定規。
表紙の絵柄の可愛いノートに、綺麗な色を引けるペン。
私と違って「たったひとつ」のあるもの達。
代用品など幾つでもある。私は多くの中の「一つ」に過ぎない。
パキッ
またひとつ、私の心が折れました。
「またかよ」と、舌打ちの音が聞こえます。
私は脆くてか弱いです。誰もが仰る通りです。
私は強くありません。いとも容易く壊れてしまいます。
けれど安心して下さい。代わりは幾らでもいますから。
例え私でなくても誰も困りはしないでしょうから。
私は一人じゃ生きられません。きっと誰もがそうなのでしょうが。
だけれど私は本当に、一人じゃ誰の役にも立てない。
私を包む人がいなくては存在価値さえ無いのです…。
大切にしてほしいだとか、丁寧に扱ってとか、
仲間は散々申しておりますが私はそんなの望みません。
だけれどただ、ただ一つだけ。
私が働いてきた証を何処かに残して欲しいのです…。