ザ・ブーンン
砂木

旅にでたけれど旅って何さ

ここはどこかな ねえ
サンダル船長さん 調子はどうだい

うん 段々 体が重くなってる
海水がしみこんでるのかなあ
沈んじゃうのかな

えー それは困るよ 船長さん
岩の故郷は遠いんだ
風さん 下から舞い上がらせてよ

何を言ってるんだか 海は笑った
船長さん 沈んだって 私の中さ
岩のかけらさん もともとは
どこからか集まって あそこに居ただけ
故郷なら すべて故郷さ

だがね 海よ
風は言った

かたまっていた間にみた事聞いた事が
かけらさんの すべてなんだよ
散らばったら寂しいだろう

旅なら散らばるのが出発じゃないか
岩は旅に出たいと言った
かけらに夢をたくしたんだ
今頃は信じている ひたすらさ

沈んだらそこが我が家
そうしなよ かけらさん

んまあそうだなあ 海さん 沈んだら考えるよ
おい どうしたんだ サンダル船長さん
いよいよ だめか

まだ 大丈夫だよ でも

でも なんだい
海と風と岩のかけらはたずねた

もう片方の 私の相棒はどうしたんだろう
私は左足 右足の相棒は
一緒に海辺に忘れられて
波にさらわれたと思ったのに

そうだな 鳥もいるし魚もいる
砂に埋まっているか
まあようするに 第二の生を生きてるよ
砂の中なんて 意外とうるさいよ
砂粒の大合唱なんて 聞いた事がないだろう

わわわわってさ
さらさらさらじゃないのかい
いいいいだっけ?
ああああ

あーあ 

何が あーあだ
せっかくまた サンダルを買ってやろうというんだ
はやく選べ

やっぱり あのサンダルが良かったなあ
白くて 気に入ったのってないなあ

で どこでなくしたんだ

ほんとにわからないの
汽車を間違えて 偶然降りた駅から
待ち時間の間だけ 海に行ってみてたから
あの駅に行けばまた 行くことはできるけど
なんていう海かしら

なんでサンダルをぬぐ必要がある

だって 砂浜を歩いてみようって彼が

彼?

じゃなくて かれいがっていうかカレーが食べたいな
みたいな

言えない事をしてきたのか

あーあ さらさらの長い髪を風にときながら
ためいきをついて彼女は言った

旅をしてきたのよ 間違えて


自由詩 ザ・ブーンン Copyright 砂木 2008-07-21 09:09:17
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