転ぶ悦び
かいぶつ
皆とサッカーをして遊んだ
ボールをまともに蹴ることなんて
高校の体育の授業以来のことだ
息をぜいぜい荒げながら
俺は必死に土の上を駈ける
全力疾走でボールを追う
だが日頃の運動不足から
疲労のピークは間もなく達し
俺の体力は気持ちに追い着けず
足がもつれ、頭からド派手に
ズッコケた
立ち上る砂煙と皆の笑い
俺も大いに笑う
少し大仰なのは照れ隠し
ここまでの見事な転びっぷり
とても痛快で懐かしい感覚
何故だろう、俺の体は
悦びの歓声を上げている
擦りむき血の滲んだ膝を見つめながら
痛みに耐える
そして俺はほくそ笑む
なんて面白いことなんだ
躓くこと
転ぶこと
失敗することは
それも派手であればあるほど
あぁ、いつから俺は
転ばない方法を
知ってしまったのだろう
いつから俺は
転ぶことを
恐れてしまったのだろう