「退屈が僕を殺す」
ベンジャミン

雨には匂いがあると思った

昼下がり
蒸しあがった空気と入れかわるようにして
突然降りだした雨の
湿った冷気が部屋を満たしてゆく

「雨だ」と
呟いたかどうかはさだかではないが
そんなタイミングだった



 かつて原爆が落とされたヒロシマで
 キノコ雲が降らせた雨は黒かったという
 肌を透過して入り込んでくるものが
 何なのかも知らずに
 ただ漠然とした死の恐怖の中で
 多くの人々が死んだ



知らないということは

ある意味しあわせで
ある意味残酷だと思った

雨が入り込まないように閉めた窓
カーテンには窓についた雨粒が
まるで涙のように流れている
いったい誰の涙なのだろう
なんて

わかるはずもない

何をすることもなく部屋の中
何をすべきか知らないままの僕は

そんな退屈に
殺されるのではないかと怯えていた


自由詩 「退屈が僕を殺す」 Copyright ベンジャミン 2008-07-18 15:59:26
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