iなひと
恋月 ぴの
* 1
愛無しには生きられない
わたしは本気でそう思っていた
* 2
あの水着もそうなんだけど
これもなんだよね
目新しさは常に外側からやってくる
そんな時代になったことを
思い知らされた日に
指先で踊るパズルはふたりの思い出
懐かしさに立ち止まろうとしても
許されることでは無く
雨戸を閉ざした母屋の軒先で
ビードロの風鈴
ちりりりんと風に揺れた
* 3
目に見えるものだけを信じる
そうすれば
ひとは愛無しでも生きていけるのだから
あなたはそんな言葉を残して
ひと夏の記憶となり
わたしの心は人肌の優しさを忘れ得ずに
ざくろの花は
愛するひとの想いに染まり
秋になると熟れた果肉を庭先に曝す
* 4
だとするならば
心を通わすことへの戸惑いは
ひとを愛した証しだと
ビードロの風鈴
ちりりりんと風に揺れた