榊 慧





早く脱出しなければ。
非行少女の、夏が来る。


















厳粛のメモ用紙、多彩なパノラマ。
薄羽蜉蝣の大群。
ストリートガールのエゴ、
そして曹達の腐乱していく初恋。



スキゾフレニアの歌、哀歌、喜劇。
綺談を語る眼帯の、鬼魅。
呼吸を止めて、そしたら、見えると思っていたのに、
劣情落下、劣情は、落下、する。



幼稚なサロメのうすいベール、
白い壁にかかっている千羽鶴。
対称。第七は、離別する時間と比例する。
伸ばした左腕の、左手の、指先から、出る何か。



知り合いの化粧水、透明。
路地裏に住んでいる、今日も。
くぐもる。触れたのは背骨。
思春期未満のロマンティカブルー(な夜)。



ここにはこなかったよ、春。
置いていかれた。
濡れている黒髪から匂う、火薬。
マテリアリズム。亜砒酸、溶ける。
軽さから卒す。



小指からの侵食範囲。
余薫アルコール、金属音と破片。
五十年前の海、
非行少女の、夏の峠。











自由詩Copyright 榊 慧 2008-07-17 20:33:56
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