ばついち
ヤム

築50年のアパートは
あたしら家族以外 全員ヘルス嬢
昼間、子供とワイワイ騒いだら
うるさいねん、外で遊んでえや、って怒鳴り声がして、壁がどんどん揺れる
あたしは真っ昼間のきっつい日差しの中
子供の手を引いて、ばつを背負ってあるく
知らない土地やけど、ずいぶん道を覚えたなあ

近所の焼肉屋の軒先で
いつもみたいに おばちゃんがホルモンを洗ってた
娘は、くちゃいねえ、と
めっちゃくちゃに笑いながら鼻を押さえる
おばちゃんもいつもみたいに笑う
あんたも、生まれてきたときは、似たような臭いしてたんやで、と思って
あたしもいつもみたいに笑う

公園で娘を友達と遊ばせて、
あたしはそのおかあさんとおしゃべり
話の流れであたしの旦那のことを話した

それやったら、おしゅうとめさんもこじゅうともおらへんのね、
大変やろけど、気が楽やわねぇ。



あんなぁ、昔の間違いなんて、どうにでもなると思ってた時期があったの
ばつがついたからて、何をそんな大げさなと鼻で笑ってた時期があった


違う、違う、現実は全然違う

故郷を忘れられない旦那が、
あたしに隠れて泣きながら母親と電話してるの
あたしちゃんと知ってんねんで



スーパーの鏡を見たら
この子のおばあちゃんって言われてもおかしくない
うすぼんやりした女が映ってた
なあ、あたしまだ30にもなってへんの





自由詩 ばついち Copyright ヤム 2008-07-16 23:33:37
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