赤い下着
榊 慧
女の人がつけている赤いレーシーな下着が、
愛だと俺は思うんやけど。結局はそういうもんなんやろ。
黒のハイソックス、黒の学校指定プリーツスカート夏仕様。
白いカッターシャツ、濃いブルーの名札。
蛙が焼けそうなくらいのアスファルト、その上をいくスニーカー。
「なんか誤解しとるみたいなんやけど、まあええわ。」
「俺はもう、誰とも同調でけへん。少なくとも、この学校の人間とは。いいねん。」
白い詩集の周りには雑食の空気が渦巻いていて常にけたたましく振動していて、
「だって、しゃーないやろ。俺みたいに向こう側にもなんか思ってることあるんやし。」
「それが本人には一番やし、それが支配してるんやからどーしよーもないやん。」
見下した目線、緊張しているかのような足取り。
「あん時の男やオッサンやって、きっと愛っての持ってたんと思うねん。」
「せやからええねん。」
それでもずっと飛べるなら。
「なあ、俺は今腰が悪うてそんな走ったりでけへんけど、」
「早く駆け抜けたり、飛んだり、したいねんで、いっつも。」
やっぱり愛ってのは、
きれーな姉ちゃんがつけてる赤いゴージャスな下着に、違いない。
七月十五日火曜日、蒸し暑い夏の午後二時半。
そういう日常を。