電気冷蔵庫 (昭和の時代−戦後)
青い風

電気冷蔵庫が普及し始めた頃
僕たちの生活はひもじさと同居していた
だから 冷蔵庫の中には
いつ見ても細長いノンスメル(脱臭剤)の箱と
小鉢に入った沢庵だけが入っていた
おっと忘れてはいけない もう一つ
銀色の製氷皿に入った氷があった

僕たちは学校から帰ると
この冷蔵庫を
バッタンバッタンと開け閉めするのを
毎日の日課とした
そして ノンスメルと沢庵を確認した後
決まって白くにごってへんな臭いのする
氷をガリガリとかじったものだった

 空っぽの電気冷蔵庫はどこの家に行っても
 台所にデンと大きな顔をしてすわり
 時々低い声で唸っていたものだった


空っぽの冷蔵庫に
物があふれて一杯になるには
だいぶ時間がかかったように思う

とにかく
必要な物は必要な量しか
存在しなかったし
物は保存できないという
自然の理にかなっていたから

それができるようになったのは
スーパーマーケットの普及によって
必要でない物が大量に売られ
保存できない物ができるように
ねじ曲げちまったから

そして そして
私たち自身も冷蔵庫のように
余分な物を体に一杯
詰め込む様になっちまった


自由詩 電気冷蔵庫 (昭和の時代−戦後) Copyright 青い風 2008-07-15 15:51:52
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