樹海帰還
水島芳野

翡翠のみずうみに、溺れてしまいたい。

声が涸れるほど乱暴に、優しい歌だけを歌った。
書簡を往復しながら、
何故暁光は目にしみるのかと問う。
つぶやきには誰にも答えてほしくなかった。

こえが届くというなら
すべて潰れてしまえばいい。
なくしてから全部、大切なものだと気づいてみるから。

魔女の棲むような碧い碧いこの森の中で
僕はいつまで、不完全な生贄のまま。
いつまで、
貪られるのを、待って、いる。

いつまで。


(いっそしとめて。)

費えたうつくしい幻の中
薄汚い白昼夢に惑う。

どんなに好きだと言っても君は死にたいと言うし、
今日の世界はたまらなく美しい。



だから壊れてみたくなった。



自由詩 樹海帰還 Copyright 水島芳野 2008-07-15 15:14:12
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