逡巡
木立 悟






指のはざまの双つの水
そら抄い空すくい
小さな渦に満ちる水


音がほつれ ほどけゆく
こぼれ たどり
道になる


毛羽だつ古い衣の袖を
水や鏡にそよがせて
生まれたばかりのみなもとに舞う


水と水は互いに触れる
指ひとつ分だけ混じりあい
爪ひとつ分だけ含みあう


幹を聴き
熱を聴く
湿る頬 湿る脚


土の上の 光の指紋
くちずさみながら
波へつづく樹


曇の柱を降りてゆく
わたしの音にわたしは惑う
舞いの終わりを告げる水


渦を見つめ
立ちどまる道
数年前の会話から
音以外は失われ
ひとかたまりの光となって
指のはざまに消えてゆく


森の奥の森を見る
わたしと違う同じ生きもの
重なりつづく熱のむこうへ
手のひらの果てさかさまに
互いの影を抱きしめる

















自由詩 逡巡 Copyright 木立 悟 2008-07-15 14:42:28
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