いっそ阿片のように
佐々木妖精
空咳に転ぶ
換気扇の下
フライパンに灰が落ち
洗っても洗わなくても
そこに立つ人はもういない
戻ることのない忠告を
体内に留めようと
タバコを外して息を吸う
吸うだけでいたかった
それだけで満たされたかった
境界線がほしくて色分けをした
煙が沈澱していく
きみの息を追いやっていく
フィルターに這いつくばったところで
冬にいたきみは夏に融け
体温やその色と共にもういない
見えないところへ行った届かない場所を向いた
もう追うことはないだろう探すこともないだろう
怖い夢を見たとかちょっと言ってみただけ
なんて気づいてほしい嘘
ただいまって伝えたくて目が覚めるときみがいた
聞きそびれたのはきみの体重きみが口ごもるその重さ
きみの重さを知るために比べる相手が要るってふざけんな
だからいっそきみごと全部
さよなら
咳き込む色を消したくて
次の煙を探そうと
忘れていた窓に触れる