ガム
1486 106

最初はそれなりに期待していた
散々魅力的な話を聞かされたから
小さな希望も胸の中で芽生えていた

だけど現実は思っていたより味気ない
大人だって思っていたより大人気ない
それは惰性で噛んでいるガムのようで
慢性的な喪失感だけがまとわりついた

最近付き合っていた恋人が家にやってきた
やり直したいとしつこく迫ってきた
面倒なので薄っぺらい札束を渡して
帰ってくれと突き放した
泣いていたのかは覚えていないが
ドアを閉めた音は冷たく響いていた

付き合いで連れていかれたキャバクラは
不自然なテンションで逆に冷めた
適当に嘘を混ぜた身の上話
気を紛らわすためボトルを流し込んだ
そこから先は覚えていないが
思い出したいほどのことじゃない

つまらないのは楽しもうとしないからか
どちらにしろ用意された娯楽は少ない
膨らませてはまた弾けて
もう味なんて残っていないのに
銀紙に包んで捨てられないのは
習慣になってしまったから ただそれだけさ

それは惰性で噛んでいるガムのように
叶ってしまった後の夢のように
すべての色を失ってしまっても
口の中で弄び続けるんだろう


自由詩 ガム Copyright 1486 106 2008-07-13 05:45:47
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