うたぐりよせる
黒川排除 (oldsoup)

蜃気楼の港に棲む体毛薄き猿

鍬を捨てる恥じらうほど山が近い

水面に枝吸う葉また葉の降る音

遠方のドアノックするシャボン玉

花の籠実は籠売る籠売りも籠

造天の深みに澱む書の類

陸の端釘で留めひとの形の紙

銀紙にうつしつつみつつつみ捨てる

風穴を貫く橋撓みすぎて円

複製された山の方から遠い山鳴り

密室の明るさに輪郭がない

うつ伏せに鳴る亀春の軋む岩陰

群れで来て渦中に片足ずつ五本

密室あく閉じた街に地の底から塔

蛙の白い舌が頬を抜け触ると濡れていた

地球儀常軌を逸し始め児童ら旋回す

大豆と化し川に降る剥き出しの若さ

両手を挙げなおも細り線だ星の夜

泥塗って証す桟橋より遠し

夜空研がれてしまうビー玉潰れてしまう


川柳 うたぐりよせる Copyright 黒川排除 (oldsoup) 2008-07-11 23:56:50
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