ザ・ブーン 
砂木

海の中の岩は水の中に
住んでいると思っていた

魚が時々 遊ぶ
漂着したものが
流れ着いては
またくるりと
一礼して 海原へ

どこにも行った事がない
どこかへ行きたいなあ
ちょっと 風さん

バンドの切れた
白いサンダルとじゃれていた風は
岩の横にシューンととまり
昔からすれば角が減ってきた
なじみの淵に 腰掛けてきく

この水の中から水のない所へ
どこでもいいから運んでくれないか
何かを知りたいんだ 

それを聞いた風は
突然 笑い出した

さっき海からも言われたよ
この器の中から
どこかへ行きたいって

二人とも持ち場を離れたら
どちらもいないよ 風の私も
どこもなくなるんだ

岩は残念に思い言った
でも海と風と旅をしたかったね

そうだねえ じゃあ さ
このサンダルに乗っていってみるかい
壊れて捨てられたようだけど
海よ 岩を少し削って
ほら 一緒に乗れよ

旅に行けるのかい 本当に
海よ それならどうか私を砕いて
そう 痛くないよ
なでてあげたいくらいだ

このサンダル もう歩けないけど
船になるね さあ 行こうか

行こう 海と風と岩と

私も行くよ

誰だ 今 しゃべったのは

私 サンダルだ

サンダル船長さん 話せるのか
じゃあ出発 進め 進め

もう一度 歩けるかな

歩けるかっていうのかい
海と風と岩は 大きな声で笑った

この中で歩いた事があるのは 
サンダル船長 一人だけさ
もういいだろう 泳げよ

そうかな そうかな

そうさ さあ出発

さあ出発
って言ってたよ

ほほう 話はわかった
で どこでなくしたって?

なくしてないよ
今ごろ 旅の最中・・・

じゃあ かわりのサンダルはいらないよね

いります












自由詩 ザ・ブーン  Copyright 砂木 2008-07-11 23:40:45
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