たべもの(草稿)
れつら
ソフトビニールの人形を
頭から咥える子、と
そんなもの食べちゃだめでしょ
とかいう母、
女性、
が、咥えてきたものたちのこと
口に含まれて
唾液まみれになり
大きくなるもの
なーんだ
大して可愛くもない女と寝た
怒ってもいないのに友人を殴った
自転の速度を計測する為に視線の先に水平をとり
手前から順々に線を引いて夜は終わらなかった
その間に閉じていく心臓にも下書きをして
切り取られていくさまをながめながら
裁断することは上手くならなかったが今は
吸いたいわけでもないのに
煙草を咥えている
食後だからだ
しぼんでしまった臓器を噛み砕かず飲み下し
喉につまらせぬように息を食道に落とし込む
どこへでも行けるし
何だってできるのだろうが
山をふたつ同時にのぼることはできない
目の前の女はカレーライスを頼んだ
青白く光る米粒と
赤黒く滾るこぼれ落ちそうなルウを
それでもすこし分けようとするが分かれ目で切り取ることができずに
スプーンの上にちいさなカレーライスを作って
口に放り込んだ
ひとくち含むたびに欠けたたべものは膨らんでしまって
この調子ではいつまでも食べ終われない
女は涙ぐんでいる
辛いのだろう