針の取れた時計
もこもこわたあめ


日差しの強い 不快指数の針が振り切れそうな昼間
一日使い捨ての部屋を掃除し始めた

「オレってきれい好きなのかも?」
なんて自分を彩る言葉を口にしてみる

小学校のころのアルバム 初恋の人
部活の仲間 学校の変わった趣味をもつ友達
付き合っていた彼女 とその元彼

今ではメモリーカードやらで簡単に残せる思い出たちも
僕らのころは重くかさばるもの

そんな中に 黒い塗装の取れかかった 針のない目覚まし時計をひとつ
手に取り 乾電池を入れ替えてみた
針がないので時間はわからない けれどそこにはカチコチ・・・ん・・・カチコチ
のすこし癖のある 世界があった

「あのころのままだ」
この時計を持っていれば何か不思議なことが起こる
そんな気がする あのころも、今も、

まるで自分が時間を動かしているような感覚
若返りに似た感覚

今は会社員の僕も
きっとあのころと何も変わっていない
夢や野望を捨てきれないで今もずっとくすぶらせてる







自由詩 針の取れた時計 Copyright もこもこわたあめ 2008-07-09 22:35:15
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