コインロッカー
モリマサ公
空気がむせかえる
ジャンクションを間違えてカーブしていくおもいきり
アクセルを踏み替えないで俺たちは加速して
絶対に追い抜けない霧もやの中を疾走する
あったかい罪を犯したかったの
サミットがさびれたロッカーを閉鎖して
だいだいいろの手首がそこいら中に落ちてる
自転車のサドルの上
中央分離帯の脇に
その角度じゃない
手のひらは全部上をむいて
それぞれの家族の群れの崩壊を
空色の場所に好きにきざみながら
コインを自販機に入れ
明日あさってしあさってって
皮膚や肉がうすくうすくうすくはがれていく
俺たちは途方に暮れ切符みたいに吸い込まれて
濁った体液をのりこなすボディーで今を通過する
泥の田んぼや朱色のひかりのトンネル
汗ばんだビル達の隙間
ゆっくりと輪郭を重ねながら
記憶のなかの観覧車のてっぺんで
ひんやりとなつかしく扉が開く
なまなましい魂がいりまじり
そしてもういちど
つきあたりで太陽を背の方向に曲がる
出口はどこ?
窓なんてどこにもなかった
説明を失いながら
名前を無くしたそれぞれの足首がモーレツな勢いで交錯し
様々な角度からきしんだ空耳が流れ
スクランブル交差点が点滅する
街路樹の葉っぱに混じってキーが揺れている
動いているものは美しい
無灯火のパトカー
思い出せない静かな音
泣いている
浮かび上がる風船が文字を飛ばしていく
やめないで
井戸のように覗き込む
「ここは どこ?」