コインロッカー
木屋 亞万

一枚の百円玉があったなら
あなたは何をするのでしょうか

小学生のあなたは
遠足のお菓子選びに
悩むことでしょう

部活終わりのあなたなら
購買で紙パックのジュースを
買うのかもしれません

買い物帰りのあなたなら
百円均一でかわいい小物を
品定めすることでしょう

一人暮しのあなたなら
98円の納豆を買って
いつもより一品多い晩ご飯

遠距離恋愛中のあなたは
公衆電話に百円を入れ
後戻りしないで今を話すでしょう

片思い中のあなたは
ラブレターを出す前に
原本のコピーをとっておくべきです

そして私
私はやはりコインロッカーに
百円玉を使うと思います

プールでも駅でも銭湯でもいい
百円が最後に帰ってくるロッカーへ
未来に届けたいものを入れておきます

これは百円貯金みたいなもんだと
周囲には言ってあるのですが
ロッカーに物を保存しています

コインロッカーは不死です
時間の流れの外にある不思議な箱
その鍵は百円なのです

私はその中に一枚の写真を
時の外に置いていきたい思い出を
保存しているのです


自由詩 コインロッカー Copyright 木屋 亞万 2008-07-06 00:27:18
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