両手いっぱいの憎しみで


両手いっぱいの憎しみで
ふくらませた青い風船
それを今 
ベランダからそっと飛ばす
それは思うように
遠くへと旅立ってはくれず
ただ あたりをふわふわと漂い始めた
部屋に戻り
静かにその様子を眺めていると
外からは
風の音と 人の声が
どこからともなく入り込んできて
少し曇った窓ガラスの上に
たくさんの顔が
そっと浮かんでは そっと消えていく

いつか 
この空が いくつもの風船で
埋め尽くされるとしたら
この窓から見える景色は
どんな色に染まるのだろう

夜の街明かりに浮かぶ
色とりどりの風船
それはきっと
声のない歌のように きれいだと思う


やがて
ためらうこともせず
風の音は止み
人の声はどこかへ帰って行った
風船は
未だ割れることなく
誰か
のもとへ向かうこともなく
ただ あたりをふわふわと漂っている

空はすべてを見下ろしながら
変わることなく ふくらみ続けていた





自由詩 両手いっぱいの憎しみで Copyright  2008-07-05 00:06:14
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