変り種/069/500文字の本棚
ピッピ

 この国で一番大きいといわれている図書館に訪れた。出迎える広いロビー、その向こうにはぎっしりと本が並んでいる。多くの本は分厚く、背表紙は無機色だ。館内は足音も響かない。すみません、珍しい本が読みたいんですが。B7列突き当たりの棚へどうぞ。
 10分ほど歩いただろうか、ようやく辿り付いたそこは極彩色の表紙で溢れていた。子供向けの絵本の棚だった。その棚の前で、うずくまっている裸の少女を見つけた。どうしたの。少女は喋らない。泣いているのだろうか。周りには、親らしい人もいないようだ。そっと肩に手を触れると、少女は突然体を起こした。驚いた僕の方を向いて微笑んだ彼女の裸体には、僕の知らない文字がびっしりと刻まれていた。(304文字)


自由詩 変り種/069/500文字の本棚 Copyright ピッピ 2008-07-02 19:42:21
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