「満たされたいと思うとき」
ベンジャミン

ノートに書いた文字が
はしから消えてゆくのと
あなたは不思議そうに
ペンを見つめていました

言葉がかわいそうだから
もうこれ以上は言わないのと
あなたはすっかり黙って
消えた文字を追いかけるように
視線を漂わせていました

梅雨ですから
毎日の天気は不安定で
突然降りだした雨に流されて
あなたの文字も消えたのでしょう

あなたは小さくうなずいて
白紙のノートをめくりました

うっすらと
消えていった文字の影が見えます

淋しさ

そこだけが
何故かはっきり読めました

そうですね
淋しさはどこにでもあるくせに
何も満たしてはくれませんから

そう言うと

あなたは小さくうなずいて
何か呟いたようでしたが

また降りだした雨に
それも淋しく流されてゆきました
   


自由詩 「満たされたいと思うとき」 Copyright ベンジャミン 2008-06-30 20:31:48
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