想像力
相良ゆう

どうやら前に夢について語っていたみたいだが、
人は夢の奴隷にはならないとでも思っているのかい。

目標は追いかけるものをその奴隷にすると言っていたようだが、
そんなことはないよ。
真の目標は人を活かすものだ。
目標と夢を区別しようとしたのだろうけれど、
君の意見はどうやら見当違いだったみたいだな。
真の目標は夢に含まれている。真の目標は夢への道しるべなのさ。

だが、夢に本当に必要なのは想像力だ。
真の目標は夢の一部として欠かせないものだが、
真の目標だけではだめだ。
夢を実現するためには想像力が必要なのだ。

夢は理想の自分のことだということは、
改めていうまでも無くわかっているだろう。
夢は目標を達成することによってその骨を与えられる。
はっきりとした形象と輪郭をもったものとなる。
けれどそれだけでは、骨だけの魚となんら変わらない。

想像力はそんな骨だけの魚に身体をあたえる。
質料を、奥行きを、深さを、
温かみを、しなやかさを、あたえるものだ。
想像力こそが夢の内容だからだ。

ところで君は目標達成についてどんなイメージを持っている。
たとえば垂直跳びのように目標としている位置に手が届くことか。
しかしそんな一時のことに満足していて本当に夢を実現したと言えるのか。
夢が実現するということは一瞬のことではない。
君が去るその時まで顕現していない夢など刹那の幻に過ぎない。
君は届いた位置に手をかけて、その高さまで上らなくてはならない。
上って下を見渡せるようになって初めて、ひとつの夢が実現したといえるのだ。

夢の実現には困難が伴うだろう。
何せ君の理想は君が自分の限界まで跳躍してやっと手が届く
その先にあるものであるはずだから。

途中であきらめてしまう者もいるだろう。
しかし君に豊かな想像力があれば、
登る苦しみよりも、その先にある輝かしいものを
鮮明に思い浮かべることが出来るだろう。
そしてそのためには何ものをも厭わない心構えが
想像力によって与えられていることを知るだろう。
精神が肉体を凌駕するといってもいい。

「思考は実現する」と誰かが言っていたが、
思考だけではだめだ。思考には愛が無い。
だが想像力は愛の産物だ。
誰かを思いやるにはその人を思う思考ではなく、
その人の立場にたってその感情に触れんとするほどの
感受性の豊かな愛のある想像力が必要だからだ。

想像力こそ夢の内容であり、愛の化身だ。
夢も目標も、想像力あって初めて意味あるものとなる。
きっとそれは君に永遠の世界を開くだろう。

感受性豊かに想像力を鍛えるんだ。
リアルをもっと深く、感じるんだ。
それが君の夢になる。


散文(批評随筆小説等) 想像力 Copyright 相良ゆう 2008-06-30 12:13:14
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