夜を呼吸する
こんぺき13ごう
摂氏36.5℃で凍てつく切なさは、雪降る夜の電熱灯の明かりに似ている
欲した物は手にした瞬間色褪せていって、わたしをその都度落胆させた
言葉でさえくちびるを離れたときからこの肉体を棺桶にして死んでいく
take me to the end of the world.(世界の果てまで連れてって)
こんな風に
わかってほしくないことは、
たった今書き込まれた情報がわたしという原型を保っていないということ
昼とも夜ともしれない質量をもった粒子
その裾野/或いは海辺を歩く者/南天の空に魚座
その目尻から口元へ、一筋の光が走る束の間の
憂欝
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あなたを酸素だと定義するのは容易い
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髪を切った椎名林檎のようになることは前提のようなもので
目指すのならそこなのだろうなと感じていた
致死量の毒を撒き散らしながらあまねく争いをこの世に招き入れて
わたし一人だけがそっとすべての難を逃れることを夢想する
90%の人間は同じだ、裏切ってでも無垢の善人という地位を手に入れたい
「贅沢な豚」といえばそれが案外いちばん当てはまる
所詮は処世術にこの身をまかせ意識の落ちる間際にだけ
人知れず想う人の名をそっと口にすること
それがわたしが愛している唯一の行為であり
誰にも知られぬ快楽をひとり貪りながら
この世にある慈しみのすべてを密かに軽蔑し続けていたい
心惹かれる愛しさはあいかわらず手に入れたいと願う
この暗がりの路地からわたしの声は誰にも届かない
あなたと同じ病にわたしも罹ってしまったから
純粋さという名の前提に還るまでは
それを演じられるようになるまでは
そもそもわたしにはあなたと分かち合うすべが、何一つない
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寒い宇宙の広い空間にぽつんとある光が綺麗だった。光の点々はこの頭に纏わりついたまましんと身体を冷やしてそれでも消えずにくるくると回っている。落ちたら拾わなくちゃ/ふれたらくだけるような弱い星々を/待ち望んでいた体温とはちがうブランケットと望遠鏡/だいたいそんなもので形成される夜
指折り数えて待った逢瀬のしるし、白い薬臭いシーツから流れる優しい声は明け方に、白んでいく空の空気をからめながらわたしの肌からすべり落ちた。
玄関の扉がしまる音で目を覚まし、今は気配すらない匂いにすがりついている。落ちたら拾わなくちゃ/ふれたらくだけるような弱いわたしたちは/なまあたたかいこの肌にふれる熱や重さをうけとめるだけの水密桃を反芻、反芻/ふと、醒めた/エデンがないならアダムもいない
ああ、楽園よ