逃れられない
ここ

地上が息苦しくなってきたので
えら呼吸に切り替えて川に潜る
存分に泳ぎ回る
懐かしい開放感に浸っていると
おなかが空いてくる
視界に入ってきた獲物に喰らいつく
と同時に上へ上へと引き上げられていく
見えない力はわたし一人では抵抗のしようもなく
いとも簡単に空気に晒された身体は肺呼吸に戻れず
遠のく意識と共にクーラーボックスの中へ

目が覚めたわたしは焼かれていて食卓の皿の上
不器用な箸が伸びてきて身体をついばんでいく
おいしい所だけほじくられて、食べられて
用済みのわたしは三角コーナーに捨てられる
まだ生きてるって。泳げるって。
深夜、三角コーナーを抜け出し、排水溝の網を外し、中へ飛び込む
運良く下水道に辿り着き、ひと息つく
ああ、ここなら釣られる心配もなく自由に泳ぎまわれそうだ
いずれまた川に押し流されることも知らず
閉鎖された開放感に浸る


自由詩 逃れられない Copyright ここ 2008-06-29 21:20:42
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