むらさき

何の前触れもなく 
私の 
頭の中で、
光が 
生まれる瞬間がある。

あなたのまなざしの
中心から
少しずれた
小さな部屋の中で 
聞きなれない羽音が
響いたとき

私は右腕をつかまれ 
連れて行かれる。

かぼちゃの花が咲く 
私たちだけの庭に。

愛が群がっている。

切られたばかりの切株に
数匹の昆虫の背中に
それは、たしかに
群がっている。

湿った黒土の上に
横たわると
まっすぐに近寄ってくる
勇ましいつたの葉。

一番小さな葉が
私の両目を
柔らかに
ふさごうとする。

あなたの方を向こうとする
私の長い髪が
小川に飛び込んで
うす黄色の下流へと
流れていく。

夏の風が泡立つ夜。

あなたのなめらかな舌の上で
今日も
一匹の魚が泳いでいる。



自由詩Copyright むらさき 2008-06-28 21:39:50
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