今村知晃
モリマサ公

なまなましい透明な輪郭ばかりが
声をともなって底からわきあがってくる。
止めようと思ってもとまらない
体が、ふるえる、ふるえる。ふるえながら
私はあなたのゆびばかりをしゃぶった。
止まらない。もう
止まらなくても良いのよ、
と誰かが言ってくれるのをまって、
交差点で、駅のホームで、看板をみあげながら。
知らない女の子の匂いがする。
肉のような雲の腹から水滴が落ちてきて、
ぽつんとやり場のない痛みばかりが
アスファルトを濡らして、
なぜなんだろう。
後ろめたい気持ちがして、
交差点で、駅のホームで、
ここはどこなんだろう。
看板を見上げながら。
どこでもない、
どこかの、
誰でもない、誰かの腕と足、胴体と首が
ずるずるっとずれていく。
もう止めなくても良いのよ、
と誰かが言った。
孤独という意味で超完璧。
さみしさでいっぱいの不透明のまっかな風船が、
血液を乗りこなすように、
つぶつぶになってのぼっていく。
もう止めなくても良いのよ。
私は私自身の指をしゃぶって、
しゃぶりながら半壊する月を見上げて、
交差点で、駅のホームで、
幾千のシャツが汗ばむ。


                                  http://po-m.com/forum/showdoc.php?did=159398


自由詩 今村知晃 Copyright モリマサ公 2008-06-23 21:19:19
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よあけ