colors 空白
水町綜助

 空が晴れていることを
 飴玉にくるんで
 青葉を打って落ちる
 雨が
 夜
 ヘッドライトが近づく路上で
 浸った黒さの中で
 金色の連弾が
 跳ね上げる音は
 かき乱す
 裏側の目に見えない
 たしかな
 はっきりと聞こえる
 絶叫のような
 よみがえっていく瑞々しさ
 その名前は
 すがすがしい混乱
 マーブル模様の煙
 あの花火
 グラウンド上空ではぜる
 色付いた空砲
 赤青黄色にすべて飲む緑
 炸裂するよ
 雨を逆回転に
 テープを回し
 雲は吸い込む
 そして染めあがる
 だれしも瞳にその色彩を
 見上げてくちを開けるんだ
 飲ませてあげる
 あのあまいひかりを
 ぼくたちが感じた
 日々の割れた
 果実の染み出す
 ドロップした
 地面に落ちる滴をほら
 一滴
 気持ちのいい沈没を感じな
 遠くなだらかに
 広がるベッドタウンに
 ともってゆく静かな感傷だ

 感傷を砕けよ
 あそこの晴れ渡った町まで
 モニュメントの大通りで
 衆人環視のなか
 道において
 走り去る
 めぐる
 トラックに踏ませて、
 こなごな

 すぐ右足を
 前に出す時間だ
 ここにはいたくない
 両手両足をちぎれるほど振って
 逃げ出すんだ
 運転手はパンクしてしまったことに怒って
 美しい音楽の流れるなか
 追ってくるだろう
 だから
 笑顔で
 走って
 速く
 たまに空をみて
 頭上だよ
 ほら
 ぼくたちの

 すごく
 速い
 スピード
 雲は流れんだ
 金色の完璧な野原や
 緑色の遺産の丘や
 茜色に
 うっかり落とした
 ビルの側面を越えて
 下をなぞる
 道路の溝を無視して
 だれも知ったことじゃない
 たとえば蒸発した水のように
 考えたことがあるかい
 一粒のゆくさき
 空気の流れにまかすだけの
 不自由なとらわれなさ
 あてどもなく、などと思うこともない
 意識のほどけたさきの空白
 寄る辺のない完璧な空白

 息せいて

 起伏をアーチに

 ふくらはぎに逆巻く風を

 太陽を鳩尾に

 右肩に満月を

 空色の瞳で

 ほどけるまで

 蒸発するまで




















自由詩 colors 空白 Copyright 水町綜助 2008-06-22 10:08:59
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