緑色の ぐるると喉を鳴らす
水町綜助

「夕暮れ時がすきだといった

 わたしは悲しくなる
 といった
 薄い光が町を
 すこしだけれども透き通らせてみせるので
 悲しくなるのだと

 町をみた
 アーチ橋の上から
 静かに流れる川と黒く切り抜かれた町なみ
 見飽きて
 語りつくしてしまったビルが
 ひろがり、空は

        語りつくしてしまった
        もうその色を
        口にすることも

 手折る
 手折られた影
 うずくまるのだ
 うずくまるのだ
 それは泣くという



 瞳はどうして
 色彩をかんじるのですか
 輪郭をみて
 愛着するの

 そこにも瞳はあって
 その精巧なしかけが
 カチリと音をたてれば
 あとに続く映像はどれもよごれていた

 毎日は埃をたてて進んだ
 なにをしていたって
 いつか
 机の上には
 白く積もっていた
 わたし」 は花瓶に挿した花を載せて
      花に興味はなく
      ながめた


静止した真横で

毎日は後ろに流れ飛んだ
一日のこらず
流れ飛んだ

今日
ガソリンスタンドの横を通り抜けた
古い塔のような運河の水門があって
架かる橋のうえを
自転車に乗った私が走り抜けていくのをみた

吹き飛んで行った毎日は
十年といい
青いシャツを着ていた私は
やはり入道雲の橙色に
うすぼんやりと染まったところがすきで
赤い果物を握りつぶしたような匂いがした
毎日それを壁に塗ったくって
あの倉庫のような建物は
汗をかいて

これは、メンタルスケッチモディファイドではない

の中で

レリーフであり
これは掛けられることのない

映画をみていた

見とれている
指でなぞっている
まだうがてるのか
電車に揺られ考えている

彫るものは持っている

生まれた町にあり
この町にないもの

果物の匂い
その、赤い

銀輪の回る
とても
早い
停止した、反射光
あまりにも
強い光

丘の上から
望む隠された建造物
深い森の匂い

蝉の鳴く夏
あの夏
泣きじゃくる

山を走った
木々を抜けて
木漏れる光が
水滴のようで
浴びて体中
濡れた汗で
梢の音、断って
いつだって唐突に
開けた空に
扉があって
遠く
モザイク模様の町は
色とりどりの屋根で
空の色は
緑色の青

喉が渇いていて
それはいつまでも

飲みたい



自由詩 緑色の ぐるると喉を鳴らす Copyright 水町綜助 2008-06-22 01:11:04
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