蟻塚
rabbitfighter

目を閉じると 暗闇の中に 無数の蟻が蠢いていた 右から左に 左から右に 幾億の蟻が 幾筋もの列を成し 暗闇の中に 餌を求め餌を運ぶ 幾億の蟻は 俺の暗闇よりも一段と黒く だから 暗闇の中に 俺は幾億の蟻を見ることができた 全身黒尽くめの 目も髪も心の景色も 目を閉じるだけで 蟻たちが 闇よりも黒く 眠りにつくまで消すこともできない 蟻たちが 幾億もの 心の中を 闇の中を 光よとどけ 光よとどけ 火を 灯りを 夜を 暗闇の中に 蟻は 歩き続け 閉じた目を 開くだけでいい 歩き続け 求め続け 暗闇の中に もっと黒く 確かな闇を 光を宿せ 恐れるな 闇の中を進め 光は届かない 光は生まれない それでも 目を開け 蟻は歩いている 光の中でも 同じように 歩いている 心は闇だ 星も太陽もなく ただもっと黒い 闇よりも黒い蟻の群れ 見えていても 見えなくても 熱を 肌を 俺の命を 糧に生きている 俺に寄り添って 光が 闇が 閉じていても 開いていても 誰もいない 光の 無いところに 闇も 無く 燃えるのは命で 生まれるのは熱で 幾千億の蟻塚が 立ち並ぶ場所に 朝が来るなどと 信じなくていい


自由詩 蟻塚 Copyright rabbitfighter 2008-06-21 10:14:48
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