濃密な五分間
北村 守通

目の前の
バイパスも閑散とし始めたら


フライを巻く


錆びだらけになったバイスに
フックを挟み
鹿の尻尾の毛やら
孔雀の胸毛やら
アルミのテープやら
色々合わせて
コーディネートする

自分自身
オシャレとやらにゃ
無頓着で
ともかく
一杯詰め込めて
動きやすけりゃ
それでよし
としているが

フックは
自分ではないので
失礼のない様に
慎重に
コーディネートする

勿論
刊行されている
雑誌類を細かくチェックし
流行りのパターンを試してみることも忘れない


デザインが決まったら
ボビンを手に取り
シザースを構え
慎重に
慎重に
各種パーツを加工し
取りつける
自然と
額に脂汗が滲む
時折
ティッシュで指先を拭き
貴重な素材達を
汚さない様
衛生管理も徹底する僅かな呼吸の乱れも
許されない

管理体制は厳重である






現実出来上がるのは
製作者の
性格同様
身も
動きも
極めてひん曲がって
もっぱら
魚を掛けるという
初期の目的を果たせたものは
極めて少ない スイムテストも
ままならない

あんまりぢゃないですか
との
抗議文が
ここ数日頻繁に届き
遂には脱走者や
自殺者も
続出しているので
近日
オフ会を開催してやる予定である


イメトレでは
目の前流れる
バイパスの大河の
曲がり角のブッシュの際で
しっかりと出たんだが


釣れなくとも
せめて顔位は
拝みたい


自由詩 濃密な五分間 Copyright 北村 守通 2008-06-20 00:39:22
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