『星を食べる』
東雲 李葉
天体観測の途中なのに君が芋虫に夢中だから、
少しでも気を引きたくて僕は梯子を駈け上る。
ぐんぐん縮んでいく背丈に優越感を感じながら、
僕は見上げた天上で赤い星に唾を付けた。
さて、どこから戴こう。何しろ長い枝が付いている。
思ったよりも大きいな。星型なんて可愛いもんじゃない!
枝の一つを軽く折り飴玉のように口に含んだ。
遠くで見てると綺麗だが実はごつごつしているな。
思ってたよりも生臭いしもしかして腐ってるんじゃないか?
何億光年も旅をしてきっと疲れているんだろう。
肉が剥けると真っ白で輝くように発光している。
くたびれきった欠片を片手に僕は空を後にした。
地上では巨大な蛾が僕を迎えて、
かさかさ羽で笑いながら古びた骨を投げてよこした。
綺麗な綺麗な骸骨だった。なんと淡く発光している。
僕は迷わずそれを食べた。星より甘く柔らかかった。
茶色い蛾に星を預けて僕は再び梯子を上った。
今度はもっともっと高く、
もっともっともっと遠く。
星を食べることはもう無いだろう。
それは生臭いのに鮮赤で肉の腐った味がした。