朝のピアニッシモ
りゅうのあくび

まだ夢のなかで
ココナッツ畑の
果実を収穫するときみたいに
静かなバスルームで
のどかな夜明けは
すでに始まって
まどろみは甘くかおり
水滴となり流れ出す

  ∽

たっぷりとコップに
ついで飲み込んだ
朝食のミルクには
地上に降りそそぐ
星の細かい欠片が溶けていて
だから朝採れたばかり
新鮮なミルクの味には
流れ星が駆けめぐった頃の
夜空の匂いがふわりとして

  ∽

ふとそとで誰かが
扉をノックして
音を立てている気がして
おだやかな
純白の太陽から陽射しが
そっと扉のふちで
こんこんと照り返していて
扉を開けて鍵をして
出かけるときには
扉を緩やかに閉めると
すがすがしい青空のはじける
音が聴こえる

  ∽

雨がやみ晴れた道
黒い傘を右手に持って
駅へと向かう途中の
水たまりを越えて歩く
靴音はかたく締まっていて
恋しい人へと伝える
言葉をふと想う
この世界から
恋の行方へと到着する
電車が遠くで
警笛をやさしく鳴らし

  ∽

空が青い朝を迎えて
日々暮らしで生まれ続ける
小さな祈りに満ちていて
ちょうど一番に
素敵な恋しい人を慕う
気持ちにも似ている

  ∽

胸の辺りからこぼれてくる
白い朝のひかりは
透きとおって凛とした
陽射しに吸い込まれる
朝には契りによって
結ばれる想いでさえ
安らぎある命の場所へと
しっかりとつなぎとめられていて

  ∽

しっとり包み込む
恋しい人の両腕が広がるように
ほんのりと朝にそよぐ風の音は
目覚めたばかりの
身体をきゅっと抱擁しながら
そっと響いている


自由詩 朝のピアニッシモ Copyright りゅうのあくび 2008-06-19 23:37:59
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