夏至
石瀬琳々

夕暮れ、薔薇は香っていた
まだ残る夕光の中で
私は花びらをそっとむしりとる
指先がいとしくて
何かを待ちわびて


ふっと夏の透き通る波が
心に押し寄せて来て足先を濡らし
すべてを呑み込んで
いつか私は溺れてしまう
立ち昇る泡 いいえあれは
のばした指先に遠く光るあれは星
あの星を私は知っている 星もまた私を
波が引いたあとに残るものは影
まだ見つけられず
たたずむばかりの私の思いが


夕暮れ、風は囁いていた
忍び寄る夜の二の腕
まなざしを思い描いている
また長い夜が始まり
心ない嘘をひとつつく



自由詩 夏至 Copyright 石瀬琳々 2008-06-19 13:56:09
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