光源
佐々木妖精

ジャングルジムを覗くマンションが
瞼の裏に座標を描く
月から見えない場所で
星もない悴んだ空間を占拠する
空っぽのブランコを一瞥し
ポケットの中 手を突っ込み
旋回して竜巻を生み
つま先で夜面を浮かす

鋭角の滑り台を駆け上がれば
頂上の熱源と
青白いパジャマ
疼くブランコ目指して走り
砂場を啓蒙する

飛び散れ
淀んだものたち
抜け落ちた髪をまとわぬよう
正しさで振り払え

静止した鎖を
握りしめられた形で握りしめる者
探す者と見つけられた者の間で
乱れた呼吸を置き去りにして
ポケットから溢れる
触れようとする指を
またねと燻る皮脂を
雨がとかしてくれるのを待つ

ベランダの持ち主が
空を乗せたブランコを映している
一粒の悪が欄干へ積もったのを知らずに
雨戸を押しのける


自由詩 光源 Copyright 佐々木妖精 2008-06-19 06:58:51
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