流花
治
赤が一片川に落ち
薄紅の花弁に早変わる
埃絡まる土上で
萎れ果てぬ事のないように
全て集めて水に還す
薄紅ひらひら翻る
川流に抗い下り行く
朝陽染み込ませたかのように
辺りをほんのり色付けて
両手を強く絞り切る
水を欲して囃す金魚に
今宵限りの口付けを
喉元掴んで酸素を与え
霞んだ瞳は影の一つも映すまい
果てた金魚を川流に浮かべ
その身の赤さが目に刺さる
堅い帯元緩めてやれば
裾を広げて蝶が咲く
諸羽を水に浸らせて
それでは飛ぶ事も叶うまい
川流に遊ばれ翻り
花弁となりて流れ行く
下る薄紅見送って
白んだ空に目を焼いた